このように割り切りの良さと切れ味のするどさで何々と何々というタイトルにどこか惹かれます。単に対だったり、親和性のある距離感が近いものも、想像を裏切るような距離感が遠いものの、どれも概して面白いものが多い気がします。良くも悪くもそんなタイトルの作品を紹介したいと思います。
本は読まれるべき時期に読んでこそ、すっと入ってくるタイミングというものがあると思いますが、この本をご紹介しようと手元に用意しているうちに大阪万博が決定し、今がそのタイミングとしていいのではないかと思い、ご紹介することにした岡本太郎さんのエッセイ集です。
芸術と青春/岡本太郎
岡本太郎さんといえば、私的には晩年のイメージが強すぎて、どこかユーモラスで、奇抜なイメージが残っていますが、この「芸術と青春」を読むとそのイメージは吹き飛ばされます。
この本に限らず、岡本さんは芸術の才能だけでなく文才にも秀でており、たくさんの評論やエッセイを残していますが、このエッセイは若き日のフランスでの生活やロマンス、両親のこと、女性と性などについて書かれています。
岡本さんは1911(明治44)年生まれで、1996年に84歳で亡くなっています。この本が最初に出版されたのが1956年ですので、45歳頃に書かれたものになります。芸術家一家に生まれ、1930年から40年までフランスで過ごし、1942年に召集され、中国戦線へ出征していますので、そういう部分が主な青春のベースとなっています。
芸術家としての一面というよりは、人間・岡本太郎を知るうえで、赤裸々でもあり、太陽の塔が制作されたのが70年ですので、それ以前の岡本さんを知るうえでとても面白い内容となっているエッセイです。
さてタイトルについてですが、自分が読んだのは知恵の森文庫版で、その「はじめに」で岡本敏子さんがタイトルについて述べられており、処女作にはすべてがある、と書かれています。そして、芸術とは青春であり、岡本太郎さんこそが、“青春の人”だとのこと。
彼の言動、表現、悩み、怒り、愛。
すべて、青春そのものであり、死ぬまで彼はそういう岡本太郎だった。
さらには、56年当時の「あとがき」に記された、太郎さん自らの言葉も紹介されています。
青春は無限に明るく、また無限に暗い。それは私の芸術、生甲斐を豊かに支え、はぐくんでくれるのである。今までも、そして、これから先も。
『芸術と青春』という題をつけたのはその意味である。
青春のすべてが、芸術の源であり、生き方が芸術であるのだから、やはり天才はすごい。
気になった方は、ぜひ。