「愛なき世界」 三浦しをん
「愛なき世界」読了。
すっかり読むのに時間がかかってしまったが、ようやく読み終わりました。
5章からなるうち、1章までは前回、書き記しておきました。
まず、タイトルの「愛なき世界」とは、植物の世界のことです。第1章で大学院生の元村さんはこう語っています。
植物には、脳も神経もありません。つまり、思考も感情もない。人間が言うところの、『愛』という概念がないのです。それでも旺盛に繁殖し、多様な形態を持ち、環境に適応して、地球のあちこちで生きている。不思議だと思いませんか?
と、愛のない世界に生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めている元村さん。2章から4章までは、その元村さんの視点で語られます。第1章で告白され、なんと返事したかはここではあえて書きませんが、元村さんの日々はとにかく研究一色。結果に一喜一憂し、その探究心(というよりは三浦さんの取材や調べた努力)には頭がさがります。はっきりいって専門的すぎる描写が延々と続きますので、恋愛小説を買ったつもりが、植物に詳しくなるというおまけつき。
元村さんの他にもサボテン愛が強すぎる人がいたり、松田教授の悲しい過去エピソードがあったりと、いろいろ話題がありますが、やはり気になるのは恋のゆくえ。
第5章は、また丸藤の視点に戻ります。
読み終わった感想は、私的には、ちょっとすっきりしませんでした。が、それは面白くなかったという意味では決してなく、安易な結末を用意しないところはさすがだと思いました。愛があったのでしょうか、なかったのでしょうか。
それにしても三浦さんは『舟を編む』もそうでしたが、専門的なことを書かせたら本当に面白いですね。きっとこれも映画化されるでしょうから、どんなキャストになるのか楽しみです。