ほぼ音楽が聴き放題な環境が整った近年において、ではどこから自分の好みにあった音楽を探し出すか。方法はいろいろありますが、その中でもガイドブックの存在はかかせません。
そんなガイドブックをはじめ、好きなアーティストの本やロックを感じる本を不定期でご紹介したいと思います。
今回ご紹介する一冊は、数多くいらっしゃる音楽評論家の中でもかなり参考にさせていただいている萩原健太さんが、2015年に発表した『70年代シティ・ポップ・クロニクル』です。
70年代シティ・ポップ・クロニクル/萩原健太
萩原健太さんといえば、ポップ・ミュージックに精通しており、ビーチ・ボーイズとエルヴィス・プレスリーのマニアとしても有名ですが、この本はまさに萩原さんの青春時代にリアルタイムで愛した日本のシティ・ポップ・ミュージックを自身の体験を交えながらディスクガイドを兼ねて紹介していく一冊です。
ここ数年のシティ・ポップ・ブームもありますが、そんなブームとは無縁で永遠のクラシックと呼ぶことができる重要作15枚の作品が、時代順に思い出とともに紹介され、その作品に派生する作品を5〜6枚紹介するという構成で計100枚ほどのアルバム紹介となっています。
中心となるのはやはり「はっぴいえんど」で、細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂の各ソロや関連バンドの紹介はしっかりされています。ちなみに萩原さんには4人のインタビューを中心とした『はっぴいえんど伝説』という著書もあります。
メインで紹介されている15枚は、以下です。
風街ろまん / はっぴいえんど
摩天楼のヒロイン / 南佳孝
扉の冬 / 吉田美奈子
Barbrcue / ブレッド&バター
MISSLIM / 荒井由美
黒船 / サディスティック・ミカ・バンド
HORO / 小坂忠
SONGS / シュガーベイブ
バンドワゴン / 鈴木茂
センチメンタル・シティ・ロマンス / センチメンタル・シティ・ロマンス
熱い胸さわぎ / サザン・オールスターズ
これらのアルバムが出たのがわずか5年ほどの出来事ですから、日本のポップ史上においてなんと濃密な時期だったことか。なお、萩原さんは学生の時、アマチュア時代のサザン・オールスターズでリードギターを弾いていたということです。
桑田とバンド活動をともにしたことで決心がついた。プロのミュージシャンになるべきは桑田みたいなやつだ、ぼくはこの才能が作り出す音楽を聞いているだけで十分に幸せなのだから、ならばぼくは音楽の聞き手のプロになってやるぞ、と。そういう意味で、桑田佳祐とのバンド体験はぼくの人生を決める大きなきっかけになったのだった。
まさに人に歴史ありだなと実感しました。ちなみに桑田さんのインタビュー本『ロックの子』という本が1980年代に出ていますが、そちらは萩原さんとの対談となっています。
気になった方はぜひ、読んでみてください。