【私的オススメ ノンフィクション】聖の青春 / 大崎 善生

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 以前読んで、心に残っている本についての私的な感想文です。読んだことがある方とは共感できれば、ない方は参考になるようでしたら幸いです。

 

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聖の青春/大崎 善生

平成時代に、藤井聡太さんのようにまったく将棋を知らない人まで巻き込んでフィーバーを巻き起こしたのが、羽生善治さんでした。その7冠にせまるフィーバーの最中、羽生さんと同世代で活躍し、「東に天才羽生がいれば、西には怪童村山がいる」と言わしめたのがこの本の主人公、村山聖さんです。

この本は病気のため、平成10(1998)年8月8日に、29歳でこの世を去った棋士の一生を追った心を揺さぶるノンフィクションです。

将棋が好きな人もそうでない方も一読の価値があると思います。また読むことによって現在藤井聡太さんがどのような闘いを行っているのかもなんとなくわかります。

 


聖の青春 (角川文庫)

 

ネフローゼという病は極度の疲労や発熱が誘因となっておこる腎臓の機能障害とのこと。腎臓の果たす大きな役割のひとつに蛋白(たんぱく)質を血液中に取りこむというものがあるが、発病すると、その濾過装置に異変をきたし、血液中に取りこまれるべき蛋白の大半が排尿という形で体外に流出してしまい、血液中の蛋白濃度が薄れることによって浸透圧のバランスが崩れ、水分が各細胞へと流出し、その結果、顔や手足が異様にむくみ出すという。

村山聖さんは5歳で、その病を発症します。その有効な療法としては、安静にすることが第一。しかし、遊び盛りの子にとって暴れては発熱を繰り返し、と入院を余儀なくし、小学校も病院の院内学級で過ごすことになります。

その入院中に出会ったのが、父が気晴らしにといろいろなゲームを用意した中にあった将棋でした。安静にしていなければならない聖少年は将棋の虜になりました。そして、将棋の本を買ってきてもらい、小学1年生にして、将棋の名著と呼ばれる『将棋は歩から』に読みふけったといいます。漢字の言い回しも格調が高く、とても子供の手に負えるようなものではないのに、大体のことは前後を読み返せばわかると、笑って言ったそうです。

その後も将棋に熱中し、何冊もの定跡書や詰将棋の本を読破し、1日何時間も将棋にむかいました。10歳のときに将棋センターに通うようになり、才能を開花させていきます。

そして中学生になると、プロ棋士になって谷川さんを倒し、名人になるという目標を持って、弟子入りします。

 

その後のストーリーとしては、師弟愛をはじめ、病と闘いながら、プロ棋士として名人を目指し、最高峰リーグ「A級」に一歩一歩駆け上がっていく感じですが、谷川さんという大きな目標とともに、村山さんに立ちはだかる物語のハイライトはやはり、同世代の最大のライバル、羽生さんです。 

谷川を倒すことだけを目標に生きてきた自分に、もう一人倒さなければならない思わぬ敵が現れた。

 

病とともにあった人生、その病があったからこそ将棋に出会い、のめりこんだ人生。人の価値観や苦しみはその人にしか知るよしがありませんし、比べることも当然できません。それでも病を経験したことによる独特な感性、考え方が、読んでいてものすごく生きるという意味を考えさせてくれます。

最後はやはり涙なくして読むことができない壮絶なものです。本人がこの出版を望んだかどうかは別だとは思いますが、残された人や読者にとって、この出版はとても意義のあるものだと思いました。

また2016年には映画化もされ、松山ケンイチさんが村山聖役を演じていますが、その体型に役者魂を魅せたことも話題の一つでした。

最後に、村山さんは将棋以外にも、音楽を聴きながらSFや推理小説、少女漫画に読み耽るのが趣味だったそうです。そして特に愛聴した音楽が、BOSTONの『宇宙の彼方へ』で、何百、何千と聴いても飽きなかったそうです。

読み終わり、好きだった理由がなんとなく感じられ、無性に聴きたくなりました。

 

気になった方は、ぜひ。

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