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【私的オススメ ノンフィクション】空をゆく巨人 / 川内 有緒

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 以前読んで、心に残っている本についての私的な感想文です。読んだことがある方とは共感できれば、ない方は参考になるようでしたら幸いです。

 

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空をゆく巨人/川内 有緒

話題になっているこの本ですが、まったく前知識のない人にどのように伝えれば、この本の魅力が伝わるのだろうか。まず、その魅力の指標のひとつとして、この作品は2018年(第16回)開高健ノンフィクション賞を受賞しています。

この本の主人公の一人は、現代美術の世界的なスーパースター、中国生まれの蔡國強(さい・こっきょう)です。とはいえ、自分は現代美術に疎いので、正直読むまで詳しく知りませんでしたが、知らなくても十分引き込まれてしまいました。そしてもう一人の主人公が、岩手県いわき市で会社を経営していた志賀忠重さん。

このスーパースターがまだ名もなき頃に、日本の、しかも、いわき市で志賀さんに出会ったことによって、世界に羽ばたいてく足がかりとなり、その後、何十年にもわたる関係と作品作りの手助けをしてきた数奇な物語です。

(すべてではありませんが、多少あらすじにふれていますので、これから読む方はご了承ください)

 

 

この人間ドラマのクライマックスは、東日本大震災の爪痕が大きく関係しますが、正直そこにいたるまでが、この本の本質だと思います。

まず、この主人公2人の人間力が半端ありません。中でも志賀さんの見返りを求めず、面白いと思ったものには惜しみなく協力する、そのブレない姿勢が人を惹きつけ、まわりを巻き込んでいきます。

その恩恵に預かったのが若かりし頃の蔡さんです。まだまったくの無名のアーティストにも関わらず、絵の良し悪しにもよらず知り合いに頼まれたからという理由だけで200万ほど絵を購入し、その後もスケールの大きくなっていく作品作りの予算や材料の工面などを周囲の善意を借りて手助けしていきます。実際、そのような協力がなければ、その後の蔡さんの活躍は、そのまま同じようなものだったのだろうかかと考えてしまうほど、その出会いは大きなものだったのではないでしょうか。

もちろん、蔡さんの『人を取り込む能力』、アイデアや人間としての魅力が多くの人を寄せ付けるということもその要因なのでしょう。予算が少ないからとそれに合わせるという発想もなく、自分がやりたいことをやるという強い信念がまわりを動かします。

ちなみに蔡さんの作品というのは、いわゆる一般的な絵画などとは違い、火薬を爆発させて描く火薬画や、屋内外のインスタレーション、映像、爆発イベントと多岐にわたっています。中でも北京オリンピックの開会式の花火の演出は蔡さんのアイデアで、記憶に残っている方も多いと思います。また彼の作品は、オークションで10億円の値がつくほどのものもあり、驚かされます。

この本には数々の哲学的な言葉があふれています。そして、それはただのうわべだけの言葉ではなく、しっかりと行動がともなっているから心を揺さぶられます。

“人間に必要なのは希望と夢だ。希望は人を元気づける。だが反対に希望をなくしたら、おしまいなんだ”

“やりたいことをやらなければ笑顔で死ねない”

そんな想いで志賀さんが活動している「いわき万本桜プロジェクト」の意義に、胸が熱くなります。まだまだ挑戦は終わりません。

 

 

気になった方は、ぜひ。

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