以前読んで、心に残っている本についての私的な感想文です。読んだことがある方とは共感できれば、ない方は参考になるようでしたら幸いです。
80年代からプロレスをリアルタイムで観ていた身としては、今回の吉本のお家騒動は、わりと既視感を感じる光景に映ります。
いわゆる背広組とレスラーとの不満や確執による対立を含め、分裂や独立が繰り返されているのがプロレスです。
実際、プロレスラーの蝶野さんも「蝶野正洋&WEGO プロレス35周年プロジェクト」記者会見で、
「この手の騒動は新日本プロレスには3年に1度あり、私は(騒動の)ド真ん中にいた」
「吉本興業はどういう展開になるか勉強したいのであれば、新日本プロレスの2000年からの10年間を見ていただければ。裏切りとか勢力が日々、変わるので見てくれれば。(極楽とんぼの)加藤浩次君の乱とかもよくありました。手をあげたら潰されます」
と語って笑いを誘っていたそうです。(下記記事より抜粋)
蝶野正洋、吉本興業騒動で年末『笑ってはいけない』を心配「バタバタしそうな感じ」(オリコン) - Yahoo!ニュース
そのなかでも80年代の新日本プロレスの内紛劇や数々の出来事は諸説語られてきたものの、何が本当で何が嘘なのかはっきりしないことが多々あります。
そんな内紛劇の当事者でもある元新日本プロレス営業部長の大塚直樹さんが、真相を後世に残すためにと書かれた著書が「クーデター 80年代新日本プロレス秘史」です。
クーデター 80年代新日本プロレス秘史/大塚 直樹
内容
この本のメインとなるクーデターとは、著者の大塚さんが新日本プロレスを退社し、長州力さんをはじめとする維新軍とともに「ジャパンプロレス」を設立した件です。
特にクーデターの発端となったキーマンである山本小鉄さんや永源遙さんはすでに他界しており、この件の真相を語れる人はもう大塚さんしかいないため、貴重な内容となっています。
反旗を翻すことになった理由と原因、誰がどういう動きをしたかなど時系列に詳細に語られています。
その他にも猪木VSアリの採点表をめぐる真相、猪木さんのIWGPのハルク・ホーガン戦の「失神」の真相、タイガーマスク引退をめぐる真相など、今までいろんな方が語ってきた内容ではありますが、大塚さんの視点で綴られています。
感想
時にプロレスは筋書きが決められたものであり、八百長などという批判めいた言葉もきかれますが、このような表の出来事と裏の出来事のリアルな部分を含めた人間ドラマが面白さのひとつだと個人的には思います。
本文でも触れていますが、猪木さんがその騒動時、失神KO負けからの復帰戦である田園コロシアムのリング上で「お前達、姑息な事はするな。誰でもいい、俺の首をカキ斬ってみろ」と名セリフを言っており、それはプロレス的な部分とリング外に対する部分の入り混じった心境のセリフであり、そんなところにも裏側を知ると見えてくる部分があります。
とはいえ、はっきり言って昭和プロレスが好きだった人以外が読んで面白いと思える内容ではないかもしれません。
ただ、「有田と週刊プロレスと」をご覧になっている方には、この辺の事件はよく取り上げられている内容なので、この辺の真相を知ることでより深く楽しめるようになるのではないでしょうか。
気になった方は、ぜひ。