2009年に刊行された『横道世之介』。
インパクトのある主人公の名前を冠したこの作品、井原西鶴の『好色一代男』から名付けられたという世之介青年の物語。
長崎から大学進学のために上京してきた物語を、各月ごとに12章に分けて、1年間が描かれています。
横道世之介 / 吉田 修一
あらすじ
なんの特技も持ち合わせていないが、人がよく、誰からも愛されるちょっと間のヌケたにくめない性格で、なぜかなりゆきでサンバサークルに入り、バイトに明け暮れつつも、様々な人たちと関わりを持ち、恋をし、ちょっとした事件にまきこまれたり、いろいろなできごとを体験したりと、そんな日常が描かれています。
ただ、この小説の青春が描かれているのは、実は20年前の過去のお話。
その章の途中にインサートされる形で、世之介と大学時代に関わった20年後(現在)の人物たちの現在の様子が描かれます。
そのことによって、少し能天気とも思えるような大学時代の世之介や登場人物たちと、年月をへた現在のギャップのようなものが、なんとも言えない深みを物語に与えていて、まったく別の見方を与えてくれます。
感想
2010年(第7回)の本屋大賞では第3位の話題作で、映画化もされている本作。
今振り返っても豪華キャストで彩られた作品で、こちらもオススメ。
私的には、この物語の大学生時代は、自分よりはちょっと前になりますが、ほぼ同じ時代の感覚で、懐かしさを感じました。
まだ携帯もなくテレホンカードで電話し、待ち合わせた相手があらわれずにどうしようもなかったりしたような記憶が、オーバーラップしました。
また、大学生時代の性に対する欲望や友人関係との懐かしい思い出などあの時代特有の淡い記憶、その対比としての現在のパート部分がシビアで、せつなく沁みました。
そして
9年ぶりで、まさかの続編となる『続 横道世之介』が今年(2019年)刊行されました。
まだ、未読ですが、絶対読みたいと思っている今日このごろです。