【私的オススメ 読書感想文】スロウハイツの神様 / 辻村 深月

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スロウハイツの神様 / 辻村 深月

 

辻村深月さんのファンの間でも人気の高い、初期の傑作『スロウハイツの神様』。

 

「スロウハイツ」とは人気上昇中の脚本家、赤羽環が所有する3階立てのアパートで、そこで彼女の知り合いやその関係者とともに共同生活を送っています。

 

彼女の他には中高生に絶大な人気を誇る小説家とその彼を売り出した編集者、恋人どうしの画家の卵と映画監督の卵(部屋は別々)、さらに漫画家の卵も住んでいます。

 

まさに形は違えど、それは手塚治虫たち漫画家が住んだトキワ荘のようにクリエーターが一つ屋根の下で暮らしています。

 

(あらすじは多少ふれますが、ネタバレには気をつけます)

 

 

 





 

リエーターどうしということもあり、それぞれ仕事や恋について悩みや葛藤、人には言えない秘密をそれぞれ抱えています。

 

その中でもひときわ大きな過去を抱えているのが、家主の赤羽環と小説家のチヨダ・コーキです。

 

特にチヨダ・コーキに関しては、彼の作品を模倣した殺人ゲームの事件が起きた影響で、休筆を余儀なくされていた過去があります。

 

赤羽環も家庭事情によって悲惨な幼少時代を過ごし、その過去のことまでも作品化してしまうという反骨精神で、徐々に成功を手にし、現在にいたっています。

 

そんな仲間うちで暮らしている中で、空きができた部屋に一人の女性が入居してくるのですが、そのことによってバランスが徐々にくずれはじめていきます。

  

 

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感想

 

このストーリーをあらすじで言い表すにはとても難しく、状況が複雑で、説明をするとネタバレになってしまうため多くは語りませんが、いろいろな犯人(正体)探しや謎解きがあります。

 

まさに、人の死なないミステリー小説(殺人ゲームの事件は除く)という側面もあり、上巻は設定説明についやされるので、多少我慢が必要ではありますが、それらに伏線が張り巡らされていて、下巻の最終章ではその伏線を見事に回収し、ラストでは愛にあふれる感動を与えてくれます。

 

この物語の中で、特に好きな部分が、世論が殺人ゲームの事件によってコーキが叩かれまくっている中で、復活を果たすきっかけを与えてくれた、のちに「コーキの天使」と呼ばれるファンが新聞に128通もの擁護の投稿する内容です。

 

派手な事件を起こして、死んでしまわなければ、声を届けてはもらえませんか。生きているだけでは、ニュースになりませんか。

 

作品の功罪に対して、事件が起きた罪の側面だけがやりだまにあげられ、作品に救われている人がいるという功の部分が表に出て来ないということを懸命に訴えていて胸を打たれます。

 

 

 

最後に

 

この小説は漫画化とキャラメルボックスによって舞台化もされていますが、ぜひドラマや映画でも見てみたい作品だと思います。

 

 

 

 

 

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