【私的 新潮文庫の100冊 / 001】《考える本》日日是好日 / 森下 典子

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大好きな文庫のひとつ、新潮文庫

 

キュンタのイラストでおなじみですが、定番のものから新たに選ばれるものまで、毎年100冊選書されています。

 

そこで、本家とかぶるものはもちろんありますが、自分の中のオールタイム「新潮文庫の100冊」を選んでいきたいと思います。

 

カテゴリーもならって〈恋する本〉〈シビレル本〉〈考える本〉〈ヤバイ本〉〈泣ける本〉に振り分けていきます。

 

 

 

《考える本》日日是好日 / 森下 典子

 

 

 

 

2018年には映画化され、樹木希林さんが亡くなった直後に公開されたということもあり、大変話題になりましたので読んだ方も多いかと思いますが、書評するのが野暮に感じてしまうような素晴らしい内容で、大学生のころから25年間ならい続けた「お茶」を通して得たという「しあわせ」をまとめたエッセイです。

 

 

あらすじ

 

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。 失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。 がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。 「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…… 季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

 

 

感想

 

こうやってブログを書いたりしているとわずか数年、下手をすれば数ヶ月体験しただけで、そのことについてわかったつもりになって書いてしまうことがありますが、二十年以上積み重ねた経験をもとに書かれた本を前にすると、とても気恥ずかしい思いがしてしまいます。

 

この本のことは知っているけど「お茶」には興味がないからといって、敬遠するにはあまりにももったいない、どんな世界にも人生にも通じる、コーチングや生き方の参考になる名著だと思います。

 

巻末の柳家小三治さんの解説にもありますが、この本は〔茶道・花道〕のコーナーにあればいいという内容の本ではないと書いていて、本当に同感でした。

 

もちろん、それは初版が発売されたころの話で、今では大ベストセラーになっているので、この本の魅力は広く知れ渡っていますが、お茶の世界ってそういうものなんだという楽しみ方はもちろんありつつ、それが本書の醍醐味ではありません。

 

エッセイといっても小説を読んでいるかのようにドラマチックでもあり、単純なしあわせではなく、涙なくして読めない部分も多々あります。

 

 「武田のおばさん」というお茶の先生は、がんじがらめに作法の決まりごとについてはとことん厳しく教えますが、その意味するものやわからないことに対しての答えを教えたりしません。

 

例えば本書のタイトルでもある「日日是好日」という掛け軸の意味も習い始めたばかりの20代の頃には「日日いい日で、いい天気でありますように」というぐらいの意味なのかなと思い続けます。

 

それが、40代となり、お茶をはじめて20年以上経った時に、その言葉の本当の意味に気づかされるのですが、自分で気づくことに本当の意味があるということを教えていたわけです。

 

そんなはじめたころのわからなさから、経験をつんでいくことによってだんだんものごとの意味がわかっていく様は、人生を読み解くミステリー小説のようでもありました。

 

私的にもそこそこの年齢なので、後輩にものごとを教えたりする機会も多々ありますが、この本を読んでなるほどと思う反面、なんでもすぐに答えを用意すればいいというものではないと反省させられる思いにもかられました。

 

著者が長年自分で経験することによって気づく素晴らしさをを書いているのに、読者である我々は、カンニングするかのように、それを読むことによって簡単に気づきを手に入れてしまっているのはもちろんありがたい話ですが、本当の意味では理解できない境地でもあるだろうとは思います。

 

20年以上ひとつのことをやり続けるということは、なんの世界でもそれだけで価値のあることだと思いました。

 

何歳になっても学び、自分を育てたいと思わせてくれる、まさに名著でした。

 

続編はこちら

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