リアルタイムで聴いた90年代の「洋楽ロック名盤」を自分の視点で100枚選んでみたいと思います。
世間一般的に知られているメジャーなアーティストと、いわゆるオルタナ、インディー系などをだいたい交互にご紹介していきたいと思います。
1アーティストにつき1枚とし、順不動で思いつくまま、現代の耳で聴いてもまさに名盤といえる死ぬまで聴き続けるであろうアルバムを私的に選びました。
(このブログは以前書いたものを編集してまとめたものです)
- 026:Pills 'n' Thrills and Bellyaches / ハッピー・マンデーズ
- 027:Keep The Faith / ボン・ジョヴィ
- 028:Girlfriend / マシュー・スウィート
- 029:Screamadelica / プライマル・スクリーム
- 030:Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space / スピリチュアライズド
- 031:Dirty / ソニック・ユース
- 032:I Can Hear The Heart Beating As One / ヨ・ラ・テンゴ
- 033:Blur / ブラー
- 034:Utopia Paarkway / ファウンテインズ・オブ・ウェイン
- 035:The La's / ザ・ラーズ
- 036:K / クーラ・シェイカー
- 037:The 30th Annivarsary Concert Celebration / ボブ・ディラン
- 038:Bringing Down The Horse / ザ・ウォールフラワーズ
- 039:The Charlatans / ザ・シャーラタンズ
- 040:Supergrass / スーパーグラス
- 041:Check Your Head / ビースティ・ボーイズ
- 042:American Football / アメリカン・フットボール
- 043:Tomorrow the Green Grass / ザ・ジェイホークス
- 044:Third Eye / レッド・クロス
- 045:Now I Got Worry / ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン
- 046:Philadelphonic / G・ラブ&スペシャル・ソース
- 047:The Division Bell / ピンク・フロイド
- 048:The Soft Bulletin / ザ・フレーミング・リップス
- 049:History: Past, Present and Future, Book I / マイケル・ジャクソン
- 050:Innuendo / クイーン
026:Pills 'n' Thrills and Bellyaches / ハッピー・マンデーズ
80年代後半から90年代にかけて、ストーン・ローゼズやニュー・オーダーらとともにマッドチェスター・ムーヴメントを盛り上げた中心バンドの一つ、ハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)。
ジョイ・ディヴィジョンやニューオーダーが所属した伝説のインディー・レコード・レーベル、ファクトリー・レコード所属でした。
(マイケル・ウィンターボトム監督による『24アワー・パーティー・ピープル』でレーベルの盛衰が描かれているのでこちらもオススメです。)
- 『Pills 'n' Thrills and Bellyaches〔1990〕』3rd
- 『Yes Please〔1992〕』4th
名盤としては3rd『Pills 'n' Thrills and Bellyaches』を選びたいと思います。
ハッピー・マンデーズといえばダンスビートにのせて、どこかミック・ジャガーを思わせれる少し調子外れともいえるヴォーカルで歌い上げるのが魅力。
バンド名から能天気なイメージを感じるかもしれませんが、サイケ調な明るい部分もありつつ、全体的に陰りというか憂いがあり、そのグルーヴ感がたまらなくかっこいいです。
そして、4枚目のアルバム製作時に、ヴォーカルのショーン・ライダーがドラッグに溺れていたことからジャマイカで録音し、その制作費がものすごくかかり、レーベルを倒産に追い込む要因を作ったといわれています。
ストーン・ローゼズらの陰に隠れた感がありますが、実はレディオヘッドのトム・ヨークやブラーのデーモン・アルバーンらもリスペクトを公言しているといいますので、重要バンドであったことは間違いありません。
027:Keep The Faith / ボン・ジョヴィ
アメリカを代表するモンスターバンド、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)。
80年代に一世を風靡したボン・ジョヴィですが、疲労とストレスからメンバー間の軋轢が生じ、一時は解散というところまでいきました。
ジョンのソロ活動などでその時期をしのぎ、90年代復活のアルバムが、この『Keep The Faith』です。
- 『Keep The Faith〔1992〕』5th
- 『 These Days〔1995〕』6th
アルバムジャケットに象徴されるように、仲違いしたバンドがあらためて団結して作成されたアルバムで、以前のきらびやかな楽曲とは趣が異なり、ソリッドで渋いぐらいの仕上がりで、さらにはボン・ジョヴィの代名詞とも言える名バラードも数曲収録され、バランスのいい構成となっています。
次作の『 These Days』も負けずおとらずの傑作です。
028:Girlfriend / マシュー・スウィート
ギターポップ(パワーポップ)といえばこの方、マシュー・スウィート(Matthew Sweet)を抜きに語れません。
非常に多作で90年には5枚のアルバムをリリースしています。
(ミニアルバム、ライブを除く)
- 『Girlfiriend〔1991〕』3rd
- 『Alterned Beast〔1993〕』4th
- 『100% Fun〔1995〕』5th
- 『Blue Sky on Mars〔1997〕』6th
- 『In Reverse〔1998〕』7th
選ぶのは今も色褪せない名盤3rd『Girlfiriend』です。
この方、日本のアニメオタクでMVにもアニメを使用し、腕に「うる星やつら」のラムちゃんのタトゥーを入れてしまうほどなのですが、それに輪をかけて音楽オタク。
このアルバムも過去のロックのエッセンスを汲み取り、見事に自分の音として昇華しています。
ギターもうまく、ポップな曲とは裏腹に結構ブルージーにギターを弾きまくっています。
7th『In Reverse』も甲乙がつけがたいほど、傑作です。
なお、そんな音楽オタクっぷりが発揮されるのが2000年代にバングルスのスザンナ・ホフスと取り組んでいる名曲カバーアルバム集。
選曲含め見事な仕上がりです。
ちなみに、2003年リリースの『Kimi Ga Suki』のジャケットが奈良美智さんのアートワークなのも最高です。
029:Screamadelica / プライマル・スクリーム
クリエイション・レコーズ主宰のアラン・マッギーに、レーベルのベストバンドと評されたプライマル・スクリーム(Primal Scream)。
出すアルバムごとにジャンルを変えてしまうほどの変化を続けてきた彼らですが、見事に90年代の3枚のアルバムではまったく音楽性が違います。
- 『Screamadelica〔1991〕』3rd
- 『Give Out But Don't Give Up 〔1994〕』4th
- 『Vanishing Point〔1997〕』5th
どのアルバムも違った色をみせつつも、すべてがプライマル・スクリームの音として成立しており、どれも甲乙つけがたいのですが、選ぶのはダンスミュージックに接近した傑作3rd『Screamadelica』です。
まさに1曲目からハイライトを迎えるかのような「Movin'On Up」の幸福感。
もうこの1曲で終わってもいいぐらいですが、これ以降もサイケ感満載の曲が続き、ジャズやゴスペルの要素なども取り入れた懐の深いアルバムです。
「Come Together」「Loaded」「Damaged」などなど聴きどころ満載で、トータルでコンセプチュアルにつくられたアルバムだと思います。
030:Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space / スピリチュアライズド
スペース・ロックとして知られるスピリチュアライズド(Spirtualized)。
中心メンバーのジェイソン・ピアーズはカルト的な人気を誇った元「スペースマン3」の中心人物。
そして名盤として選ぶのは3rd『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space』です。
- 『Lazer Guided Melodies〔1992〕』1st(日本発売 2001年)
- 『Pure Phase〔1995〕』2nd(日本発売 2001年)
- 『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space〔1997〕』3rd
バンド名の通り、インナートリップを誘うようなサウンドで、オルガンやブルースハープを高らかにならして、骨太な演奏がかっこいいの一言。
私的には恥ずかしながら後追いで知ったアルバムなので知らなかったのですが、スペース・ロックたる所以ともいえるタイトル曲は、エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」のリフレインですが、発売当初はプレスリーの遺産財団から許可が下りなかったため、オリジナル・ヴァージョンでははずされていたとのこと。(Wikipedeiaを参照しました)。
2009年の再発盤以降が本来意図したヴァージョンとのことで、自分が買ったのもこれ以降なので、当たり前のように聴いていましたが、このヴァージョンで聴けてよかったです。
031:Dirty / ソニック・ユース
80年代以降のオルタナ、インディーシーンはほぼ彼らの影響を受けているといっても過言ではないカリスマ、ソニック・ユース(Sonic Youth)。
ニルヴァーナやダイナソーJr.らも彼らに見初められて世に出てきました。
- 『Goo〔1990〕』
- 『Dirty 〔1992〕』
- 『Experimental Jet Set, Trash & No Star〔1994〕』
- 『Washing Machine〔1995〕』
- 『A Thousand Leaves〔1998〕』
- 『SYR4 Goodbye 20th Century〔1999〕』
ニューヨーク出身のアートに造詣の深いメンバーによるそのサウンドは、時に難解で聴く人を選ぶかもしれませんが、この格好良さにハマると抜け出せません。
3人がヴォーカルというスタイルで、パンキッシュでとがったギターサウンドに、ノイズにつつまれたそのサウンドは独特で、まさにクールの一言。
私的には代表作であるメジャー移籍第1弾の『Goo』と『Dirty』が彼らの作品の中でも聴きやすくかっこよさがわかりやすいアルバムだと思いますので、『Dirty』を選びたいと思います。
ちなみにこの作品のプロデューサーとミックスは、ニルヴァーナの『Never Mind』も担当しています。
032:I Can Hear The Heart Beating As One / ヨ・ラ・テンゴ
80年代から現在まで第一線で活躍するUSインディー・シーンの最重要バンド、ヨ・ラ・テンゴ(Yo La Tengo)。
- 『Fakebook〔1990〕』カヴァー集
- 『May I Sing With Me〔1991〕』
- 『Painful〔1993〕』
- 『Electr-O-Pura〔1995〕』
- 『Strange But True〔1996〕』
- 『Genius:Love=Yo La Tengo〔1996〕』編集盤
- 『I Can Hear The Heart Beating As ONe〔1997〕』
名盤として選びたいのは彼らの存在を世に知らしめた代表作『I Can Hear The Heart Beating As One〔1997〕』です。
彼らのサウンドをはじめて耳にした時、決して張りあげることのない脱力感のあるヴォーカルに、簡素な音でタメがあり、ややひねくれたフリーキーなサウンドに今までに聴いたことのないものを感じました。
インディ・シーンにおいてこの手のサウンドは後にたくさんあらわれましたが、ソニック・ユースとは別のベクトルで、彼らの影響はかなり大きいと思います。
夫婦プラス1人といったバンド構成のそれぞれがヴォーカルを取り合うスタイルで、サイケ感のあるドリーミーポップからノイジーなパンキッシュな曲まで、幅広く楽しむことができるアルバムです。
033:Blur / ブラー
続いては、ブラー(Blur)です。
私的にはオアシスVSブラーという世間の図式に踊らされ、正直当時はオアシス派だったため評価がかなり遅れましたが、あらためてすごい懐の深いバンドだと思います。
- 『Leisure〔1991〕』
- 『Modern Life Is Rubbish 〔1993〕』
- 『Parklife〔1994〕』
- 『The Great Escape〔1995〕』
- 『Blur〔1997〕』
- 『13〔1999〕』
こうやって、アルバムを振り返ると90年代というたった10年でものすごい変遷を遂げています。
このバンドに関しては時期による思い入れの強い方もいらっしゃるでしょうが、私的には、ブリットポップから脱却し、オルタナ系サウンドに舵を切った『Blur』を選びたいと思います。
「Beetlebum」と「Song 2」という屈指の名曲が立て続けに並ぶだけで、もうその価値を感じます。
034:Utopia Paarkway / ファウンテインズ・オブ・ウェイン
USパワーポップ(ギター・ポップ)・バンド、ファウンテインズ・オブ・ウェイン(Fountains Of Wayne)。
- 『Fountains Of Wayne〔1996〕』
- 『Utopia Parkway〔1999〕』
名盤として選びたいのは2nd『Utopia Parkway』です。
完璧なポップ・アルバムとはまさにこの一枚と言いたいほど、大好きなアルバムです。
憂いのあるヴォーカルの声とコーラスが爽やかで、そのメロディ・センスは抜群。
捨て曲がまったくない、青いというぐらい若さあふれるいつまでも色褪せない傑作です。
たまにハードロックバリバリな感じでギターを弾きまくっていたりするのも愛嬌を感じます。
035:The La's / ザ・ラーズ
たった一枚のアルバムで、名を残しているザ・ラーズ(The La's)。
- 『The La's〔1990〕』
デビューから3年しても完成しないアルバムをメンバーに無断でレコード会社がリリースしたといういわくつきのアルバムで、彼らは仕上がりに納得しないまま、その後活動停止してしまいます。
それでも名曲「ゼア・シー・ゴーズ」をはじめとして、アルバムの出来はものすごく素晴らしいもので、音楽メディアでは高い評価を受けたアルバム。
いったい、どこに納得がいっていなかったのかというぐらい。
まさにミュージシャンズ・オブ・ミュージシャンといわれる存在です。
再結成してサマーソニック05で来日した際の単独ライブに、リスペクトしているというオアシスも観覧にきたということで話題にもなりました。
036:K / クーラ・シェイカー
ブリット・ポップのブームにのってデビューしたクーラ・シェイカー(Kula Shaker)。
90年代には2枚のアルバムを残しています。
- 『K〔1996〕』1st
- 『Peasants, Pigs and Astronauts〔1999〕』2nd
サイケデリックでグルーヴィなオールドロックスタイルとインド音楽のテイストを取り入れた楽曲のバランスが絶妙で、他とは一線を画する独自の世界観を確立しました。
どちらも捨て難いですが、やはり登場感の衝撃という意味を含めて1stの『K』を選びたいと思います。
2ndでは、よりスピリチュアルなコンセプトを追求し、インドテイストも強まっていますが、そちらも好みです。
ちなみにバンド名も9世紀のインドのクラシェクハラ王に由来するほどの傾倒ぶり。
一度は解散したものの再結成を果たし、2016年には、時をこえた続編ともいえる『K 2.0』もリリースしたのも感慨深いものがあります。
037:The 30th Annivarsary Concert Celebration / ボブ・ディラン
ある意味ここまでの流れからいくと反則ともいえますが、それぐらい90年代の中で私的には特別なアルバムだと思うライブ盤の傑作、ボブ・ディラン(Bob Dylan)の「30周年トリビュートコンサート」です。
ちなみにボブ・ディランの90年代のオリジナルアルバムのディスコグラフィは以下となります。
- 『Under th Red Sky〔1990〕』
- 『Good as I Been to You 〔1992〕』
- 『World Gone Wrong〔1993〕』
- 『Time Out of Mind〔1997〕』
今回ご紹介するのは1992年にレコード・デビュー30周年を記念して、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにて行われたトリビュートコンサートで、1993年にリリースされた2枚組です。
オープニングのジョン・クーガー・メレンキャンプからはじまり、前半のハイライト、スティーヴィー・ワンダーの「Blowin' in the Wind」、ルー・リード、エディ・ヴェダーと続き、トレイシー・チャップマンの「The Times They Are A-Changin'」、ジューン・カーター・キャッシュ、ジョニー・キャッシュ、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソン、もはや原曲がどんなだったかわからないぐらいカッコいいジョニーウィンターの「Highway 61 Revisited」、ロン・ウッド、そしてリッチー・ヘブンスのオリジナルを超えた名カヴァー「Just like a Woman」、クランシー・ブラザーズ、ロビー・オコネル、トミーメイケム、ロザンヌ・キャッシュ、ショーン・コルヴィンとまだまだこれでも2枚組の1枚目。
2枚目でもニール・ヤングやエリック・クラプトンの名演、クリッシー・ハインド、泣けるオージェイズの「Emotionally Yours」、そしてともに歴史を彩ってきたザ・バンド、そして今は亡きジョージ・ハリソンとトム・ペティ(泣)、ロジャー・マッギン、そして終盤からはご本人も登場し、ラスト「Girl from the North Country」で幕を閉じるという、すごすぎるメンバーと圧巻の演奏です。
ボブ・ディランの曲は、本人が歌うよりも他の人が歌った方がその曲の良さを実感できるという不思議な現象がありますが(あくまで私見です)、このコンサートはまさにそれを物語っていると思います。
オリジナル・アルバムの方もそれまでの年代とはもちろん比べることはできませんが、トラディショナル・フォークをアコギとハーモニカのみで歌った『World Gone Wrong』も良作だと思います。
038:Bringing Down The Horse / ザ・ウォールフラワーズ
ボブ・ディランという最強遺伝子を持つ息子、ジェイコブ・ディランが率いたバンド、ザ・ウォールフラワーズ(The Wall Flowers)。
- 『The Wallflowers〔1992〕』
- 『Bringing Down the Horse〔1996〕』
親の七光りでは終わらない傑作、2nd『Bringing Down The Horse』を名盤と選びたいと思います。
実際、ボブ・ディランに名前負けすることのないほどで、グラミー賞の2部門を獲得し、名実ともに評価されたアルバム。
私的にはボブ・ディラン的というよりは、トム・ペティやブルース・スプリングスティーンに近い匂いを感じます。
奇をてらうことのない、ストレートなアメリカン・ロックで、すがすがしい気分にさせてくれます。
1曲目の名曲「One Headlight」や「Josephine」など聴きどころ満載です。
039:The Charlatans / ザ・シャーラタンズ
ブリット・ポップ・ムーブメントから飛び出し、今も息の長い活動を続けている、ザ・シャーラタンズ(The Charlatans)。
- 『Some Friendly〔1990〕』
- 『Between 10th and 11th 〔1992〕』
- 『Up to Our Hips〔1994〕』
- 『The Charlatans〔1995〕』
- 『Tellin' Stories〔1997〕』
- 『Us and Us Only〔1999〕』
シャーラタンズは存在こそ多少地味な印象を受けますが、いぶし銀のようなバンドで、90年代はあまり外れの少ない良作をコンスタントに量産していました。
『Tellin' Stories』も捨て難いですが、セルフタイトルとした4th『The Charlatans』を選びたいと思います。
一般的にセルフタイトルを冠する場合、心機一転とか自分たちでプロデュースをした場合とかいろいろあると思いますが、そのぐらい思い入れがあったということだと思います。
こちらはエンジニアとともに自らプロデュースを手がけたということで、その出来にメンバーも納得のいく仕上がりだったらしく、ハモンドオルガンを効果的に多用したグルーヴィなサウンドで、彼らの持ち味が発揮された今聴いても色褪せない素晴らしい作品です。
040:Supergrass / スーパーグラス
そしてシャーラタンズと同時期にブリット・ポップ・ムーブメントで一世を風靡したスーパーグラス(Supergrass)。
- 『I Should Coco〔1995〕』
- 『In It for the Money〔1997〕』
- 『Supergrass〔1999〕』
こちらもセルフタイトルの傑作3rd『Supergrass』を選びたいと思います。
タイトルに関してはセルフ・プロデュースしてということよりも、どちらかというと納得のいくタイトルを思いつかなかったため無題になったということらしいですが。
1stではパンキッシュで若さにまかせたはじけるようなサウンド、2ndではややダークな感じになりつつもその流れを汲んでいました。
このアルバムではややミドルテンポで落ち着きのある方向へシフトし、1曲目のCMでも使われた名曲「Moving」から始まり、さまざまなエッセンスををうまく取り入れ、彼らの魅力はそのままに進化を遂げています。
インパクトでいえばものすごいエネルギーを発散させまくりの記念碑的1stも捨て難いですけど。
041:Check Your Head / ビースティ・ボーイズ
言わずとしれたれた、ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)。
- 『Check Your Head〔1992〕』
- 『Ill Communication〔1994〕』
- 『Hello Nasty〔1998〕』
ビースティ・ボーイズは当たり前ですが、ヒップホップの部分にばかり気をとられがちですが、実は本当に懐が深いバンドで、もともと前身のバンドではハードコア・パンクバンドだったこともあり、演奏も含め、その幅広い音楽への造詣の深さに感心してしまいます。
今回名盤として選ぶ『Check Your Head』は、彼らが生楽器による演奏したアルバムで、パンクであり、ファンクであり、どこかプログレッシブ・ロックを思わせたり、さらにはチープトリックやボブ・ディランをサンプリングしたりと、聴いていていつも新たな発見を与えてくれるロック好きにこそあらためて聴いてほしいアルバムだと思います。
もちろん大名曲「サボタージュ」を含む『Ill Communication』も捨て難いです。
042:American Football / アメリカン・フットボール
エモ/ポスト・ロック・バンド、アメリカン・フットボール(American Football)。
- 『American Football〔1999〕』
シカゴ・ポストロックシーンといえば、トータスやシーアンドケイクが代表格ですが、その中でも重要人物のマイク兄弟の弟、マイク・キンセラが率いたバンドのデビュー・アルバムです。
2017年にはなんと17年ぶりにアルバムをリリースし、喜ばせてくれました。
私的にはこのエモ/ポスト・ロックという定義がいまいちよくわからないのですが、純粋にこのアルバムはジャンルにとらわれない美しいメロディとやや変則的なビート、憂いのある歌声にグッとくるものがあります。1曲目の「Never Meant」のアルペジオから鷲掴みにされてしまいます。
ほぼ2000年代に近いサウンドですが、まったく色褪せない今聴いても新鮮な名盤です。
043:Tomorrow the Green Grass / ザ・ジェイホークス
カントリーやフォークのエッセンスを取り入れたオルタナ・カントリー・ロックバンド、ザ・ジェイホークス(The Jayhawks)。
- 『Hollywood Town Hall〔1992〕』
- 『Tomorrow the Green Grass〔1995〕』
- 『Sound of Lies〔1997〕』
名盤として選びたいのはなんといっても彼らの最高傑作というだけでなく、90年代のアメリカン・ロックの中でも特に際立った一枚、『Tomorrow the Green Grass』です。
60〜70年代にはバーズやバッファロー・スプリングフィールド、70年代〜80年代にはイーグルスと、その先人の流れを汲みカントリーやフォークのエッセンスを取り入れたアメリカン・ロックサウンドで、大名曲「Blue」をはじめ、全曲みずみずしいコーラスワークが冴え渡り、いま聴いても懐かしさと同時に新鮮な気持ちを与えてくれる、まさに名盤です。
最近こういうストレートなアメリカン・ロックサウンドのバンドが少ない印象ですが、ぜひもっと出てきてほしいと思います。
044:Third Eye / レッド・クロス
実は80年代前半から活躍していて、今も(?)おそらく活動している息の長いバンド、レッド・クロス(Red Kross)。
- 『Third Eye〔1990〕』
- 『Phaseshifter〔1993〕』
- 『Show World〔1997〕』
90年代には先にご紹介したジェリーフィッシュやファウンテインズ・オブ・ウェインらと並び、パワーポップ(ギター・ポップ)というジャンルで一時代を築きました。
そして、その中でも名盤として取り上げたいのが『Third Eye』です。アルバムジャケットは苦笑せざるを得ない感じですが、それはそれ。それにめげずに聴くと素晴らしい楽曲と出会えます。
演奏はグランジよりな激しいサウンドながら、メロディセンスは抜群にポップというところが彼らの持ち味なのですが、このアルバムではその演奏の激しさが控えめです。
その為か、全体にポップに仕上げられたことにより、メンバーの中では最も評価の低いアルバムとのことらしいのですが、そんなことは聴く側には関係のないことで、素晴らしいアルバムであることは間違いありません。
初期のザ・フーを思わせる1曲目から、少年ナイフにインスパイアされたとういう4曲目など聴きどころ満載で、全曲楽しませてくれます。
045:Now I Got Worry / ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン
ツインギターとドラムの3人編成で、ベースレスのブルース・ロックバンド、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(The Jon Spencer Blues Explosion)。
- 『Crypt Style〔1992〕』
- 『The Jon Spencer Blues Explosion〔1992〕』
- 『Extra Width〔1993〕』
- 『Orange〔1994〕』
- 『Now I Got Worry〔1996〕』
- 『Acme〔1998〕』
今ももちろん活躍していますが、1990年代のジョンスペ(略にて失礼します)はかなり人気を確立していました。どのぐらいかというと、2000年に始まった第1回サマーソニックの2日あるうちの初日のヘッドライナーをつとめています。ちなみにもう一日はグリーン・デイでした。
それはさておき、名盤としてご紹介したいのは、『Now I Got Worry』です。まず、1曲目の「Skunk」の絶叫に驚かされると思いますが、とにかくエネルギッシュな演奏で、曲ごとにブルース、パンク、ガレージ・ロックのエッセンスを使い分け、最高にグルーヴィなサウンドを堪能することができます。
日本でブレイクするきっかけとなった『Orange』も、もちろんおススメです。
046:Philadelphonic / G・ラブ&スペシャル・ソース
ジャズやフォーク、ブルースをベースに、ヒップホップを取り入れたスタイルで、ジョンスペとはまた一味違うブルースの魅力を堪能することができるのが、G・ラブ&スペシャル・ソース(G.Love & Special Sauce)です。
- 『G.Love and Special Sauce〔1994〕』
- 『Coast to Coast Motel〔1995〕』
- 『Yeah, It's That Easy〔1997〕』
- 『Philadelphonic〔1999〕』
90年代は4枚のアルバムをリリースしていますが、ご紹介したい名盤は、4th『Philadelphonic』です。
最近ではジャック・ジョンソンと一緒にオーガニックなサーフ・ミュージック・シーンで語られることが多いですが、私的には90年代はそういうイメージとはまったく別な感じでとらえていました。
そのジャック・ジョンソンとの関係が始まったアルバムでもあり、彼が提供した名曲「Rodeo Clowns」をはじめ、今までの通受けのするようなスタイルから、メロディアスな方向も取り入れて楽曲の幅も広がり、より彼らの魅力が増したアルバムとなっています。
047:The Division Bell / ピンク・フロイド
この企画では唯一のプログレッシブ・ロックバンド、ピンク・フロイド(Pink Floyd)。
そして、名盤としてのご紹介は、当時前作から7年ぶりにリリースされた『The Division Bell』です。邦題は『対/TSUI』ですので、そちらの方が馴染み深いかもしれません。
- 『The Division Bell〔1994〕』
ファンの間では評価が激しく分かれる作品かと思いますし、かつての作品と比べることはもちろんできませんが、デヴィッド・ギルモアがリーダーシップを執ったアルバムとしては前作から続いて2作目となるこの作品、ゆったりとした奥行きを感じさせるサウンドで、情景が浮かぶような美しい楽曲が並び、D・ギルモアの泣きのギター・サウンドを十二分に堪能できます。
048:The Soft Bulletin / ザ・フレーミング・リップス
独特のサウンドで異彩を放つザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)。
- 『In a Priest Driven Ambulance〔1990〕』
- 『Hit to Death in the Future Head〔1992〕』
- 『Transmissions From The Satellite Heart〔1993〕』
- 『Clouds Taste Metallic〔1995〕』
- 『Zaireeka〔1997〕』
- 『The Soft Bulletin〔1999〕』
なんと4枚同時再生で曲になるという実験的アルバム『Zaireeka』をリリースしたりと、サイケ感あふれるサウンドが持ち味のバンドですが、名盤として紹介したいのは彼らの出世作『The Soft Bulletin』です。
ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンがサマーソニックの第1回のヘッドライナーとご紹介しましたが、その屋内ステージのトリをつとめたのが、このフレーミング・リップスでした。 ライブもエンターテイメントにあふれていて楽しいバンドです。
その『The Soft Bulletin』ですが、それまでのアルバムとは一転して、シンセを多用したポップなサウンドと独特のドラムのリズム感で、1曲目の「Race for the Prize」から幸福感に包まれます。そして、どこかセンチメンタルな雰囲気が全体に漂っているのもこのアルバムの特徴だと思います。
後に、ピンクフロイドの「狂気」のカヴァーアルバムもリリースしていますので、音作りにも強いこだわりが感じられます。
049:History: Past, Present and Future, Book I / マイケル・ジャクソン
前半をしめくくる2組。
まずは、キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)です。
- 『Dangerous〔1991〕』
- 『History: Past, Present and Future, Book I〔1995〕』
マイケル・ジャクソンの黄金期といえば、やはり80年代となるのでしょうが、90年代もやはりすごいです。
「Heal The World」、「Black or White」収録の『Dangerous』ももちろん、捨てがたいのですが、名盤としては『History: Past, Present and Future, Book I』の方を選びたいと思います。
このアルバムは少し変わっていて、2枚組の1枚目が最強のベスト(もちろん先にあげた「Heal The World」「Black or White」も収録)で、2枚目がオリジナル新録という過去と未来を併せ持つ、まさにヒストリーな一枚。
名曲「Earth Song」や「You Are Not Alone」をはじめ、「They Don't Care About Us」のマイケルソング独特のギターサウンドを堪能、極め付けはビートルズのカヴァー「Come Together」のおまけ付き。シングルカットされている曲が多く、聴きどころが満載です。名盤として外すことはできません。
050:Innuendo / クイーン
そして前半のラストは映画『ボヘミアン・ラプソディ』も最高すぎた、伝説のバンド、クイーン(Queen)です。
- 『Innuendo〔1991〕』
- 『 Made in Heaven〔1995〕』
そして、名盤として選ぶのは『Innuendo』です。
フレディ・マーキュリー存命中としてのラストアルバムにして、死を悟りながら制作された魂の一枚。
一部の曲を除いて、全編にわたって悲壮感が漂っており、どうしても姿勢を正さずにはいられません。重厚なオープニングの「Innuendo」から、ラスト「The Show Must Go On」にいたってはこれ以上の曲はないという、まさにバンドの歴史に終止符を打つ、必聴の一曲。
このアルバムが90年代に残されたことが、私的にはものすごく意味のあることだと思います。
そして死後届けられた、まさにギフトな一枚、『 Made in Heaven』も忘れられません。
まさに洋楽界のキングとクイーン。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。続きもぜひご覧ください。
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