城のなかの人 / 星 新一
どんな本?
星新一さんといえば、SF作家でショートショートというイメージしかないという方もいるかと思いますが、意外にも歴史/時代小説も書いています。
この作品は、1973年に刊行された短編集。
5つの短編で構成されていますが、表題作の「城のなかの人」は100ページ弱とショートショートになれている方にはちょっとびっくりのボリュームかもしれません。
このような作品が書かれた経緯は、最相葉月さんのノンフィクション作品『星新一 一〇〇一話をつくった人』にも詳しく書かれていますので、気になる方はそちらも面白いので、ぜひ読んでみてください。
さて、5編のうちの3作は豊臣秀頼と由井正雪、小栗上野介忠順を主人公とした歴史小説で、他2作はとある藩のフィクション話の時代小説となっています。
あまり主人公としてはおめにかかれない人を取りあえげているあたりが、星新一さんならではだと思います。
この本の読みどころ
中でも豊臣秀頼を扱った「城のなかの人」と小栗上野介忠順を扱った「はんぱもの維新」は、ある程度歴史的事実に即して書かれているのですが、その切り取り方と構成の妙は、さすが星新一というような一味違った歴史小説となっています。
大河ドラマ『真田丸』や『西郷どん』をご覧になった方であれば、より時代背景にすんなり溶け込めて楽しめるのではないでしょうか。
さらに、由井正雪を扱った「正雪と弟子」は、史実をベースにしつつもかなり脚色を加えられていて、まるで現代の詐欺セミナーをなぞらえているような面白いストーリー。
どの話も星さんのショートショートでみられるように、ラストはちょっとひねったオチとなっていて、にやりとさせられます。
歴史/時代ものとはいえ、ブラックユーモアがたっぷりこめられていて、とっても読みやすい作品です。