淋しい狩人 / 宮部 みゆき
どんな本?
古本屋が舞台の小説といって真っ先に思い浮かぶのは、現在では『ビブリア古書堂の事件手帖』が筆頭ではないでしょうか。
でも、宮部みゆきさんファンならば、この作品を思い浮かべることでしょう。
1993年に刊行された連作短編集『淋しい狩人』です。
舞台は東京下町にある古本屋。
主な登場人物は初老の雇われ店主イワさんとたまに店を手伝っている高校生の孫、稔。
この古本屋を起点に事件が次々おこります。(そんなに事件っておこるものでしょうか)
この本の読みどころ
短編ですので、一話ごとに事件は完結しますが、殺人事件やら児童虐待やら失踪事件やら、なぜ古本店主がそんなに事件にまきこまれる?というほど様々な事件解決に乗り出します。
収録作品は
- 六月は名ばかりの月
- 黙って逝った
- 詫びない年月
- うそつき喇叭
- 歪んだ鏡
- 淋しい狩人
の6作品。
舞台が古本屋ですから、実在の本から架空の本までさまざまな本が事件に絡んできます。
中でも『うそつき喇叭』という作品に出てくる、そのタイトル通りの絵本がとてもよくできたストーリーで、読んでみたいなあと調べてみたところ、どうも宮部さんの創作の可能性が高いらしく、ぜひ出版してほしいと思うようなすばらしい内容。
他にも『六月は名ばかりの月』では結婚式の引き出物に出された本に、誰が、どうやって落書きを書いたのかという謎や、『黙って逝った』では、亡くなった父の部屋に同じ作家の本が300冊もあった謎、『歪んだ鏡』では電車の網棚においてあった本に挟まっていた名刺の謎など、なぜ?というストーリーが満載。
さらんい表題作『淋しい狩人』は、未完の推理小説に対し、自らが事件を起こし、完結のストーリーを描こうとする犯罪者が出てくるなど、まるで『模倣犯』を彷彿とさせる話も。
ちなみに作中の古本屋名は田辺書店ですが、大森望さんの解説によるとモデルとなっているのが、江東区南砂にあるその名も、「たなべ書店本店」とのこと。
チェーン展開で数店舗あり、規模も作中とは全然違うようですが。