バビロンの秘文字 / 堂場 瞬一
どんな本?
バビロンとは、現在のイラクに位置する文明発祥の地とされる古代メソポタミア地方の王国。
その地で用いられていた楔形文字のシュメール(シュメル)語は、まだまだ多くの謎につつまれています。
本書はそのシュメール語で書かれた「バビロン文書」をめぐって、陰謀が繰り広げられるという、読まなくても想像するだけでワクワクが止まらない内容となっています。
舞台は、スウェーデン、イラク、アメリカ、ドイツ、日本となんとも広範にわたり、さらにはCIAやらFBIやら各国の警察組織を巻き込んで大騒動が巻き起こります。
堂場 瞬一さんといえば、「刑事・鳴沢了シリーズ」を代表作とする警察小説をはじめ、スポーツ小説や社会派小説など幅広い作風で、2015年にはなんと刊行数100冊を突破するというものすごい数の本を世に送り出しています。
そして、本書『バビロンの秘文字』はその中でも最高傑作の呼び声高い一冊となっています。
この本の読みどころ
本書はとにかくものすごいボリュームで、単行本では3冊だったものを文庫では上下2冊にまとめられています。
スウェーデンのストックホルムにある国際言語研究所でシュメール語を研究する日本人女性、里香とその恋人の報道カメラマン鷹見が主人公です。
何者かによって国際言語研究所が爆破されてしまうのですが、それと同時に里香は未解読の粘土板“バビロン文書”を持って逃亡します。
背後には数々の大国の陰謀が蠢いていて、そのバビロン文書をめぐる戦いが繰り広げられるのですが、果たして里香はどう関わっているのか?
そして、その陰謀に巻き込まれていく鷹見はどうなってしまうのか?
本当に風呂敷の広げっぷりがハンパありません。
分厚いものの読みやすいので、すらすら読めますが、堂場さんの特徴なのか、食レポの様子の描写が笑ってしまうくらい多く、ともすればスピード感をそがれているような気もしないではないですが、スウェーデンの食事情がこれでもかと描かれています。
もしかしたら、この描写を減らすだけで、ページ数を減らせたのでは?と思ってしまいますが、それはそれ。好みがわかれるところかもしれませんが私は好きです。
古代史や陰謀論、ダン・ブラウン作品などが好きな人にはたまらない一冊です。