倍返しは“半沢直樹”だけじゃない!『再生巨流 楡 周平』はこんな本!(ネタバレなし)

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再生巨流 / 楡 周平

  

どんな本?

 

現在放映中のドラマ『半沢直樹』、相変わらずの面白さですね。毎週楽しみです。

企業や業界、そこでおこった事件を舞台にした小説をいわゆる経済小説といいますが、そのジャンルにおいて面白い作家は池井戸潤さんだけではありません。

 

今回ご紹介するのは、書店でも最近、倍返し小説の筆頭としてよく目にする、楡 周平さんの『再生巨流』です。

半沢直樹が銀行なら、こちらは運輸会社が舞台となっています。

ちょっと前の小説ですが、半沢直樹”に負けないぐらい大逆襲を楽しめるエンタメ経済小説となっています。

 

この小説が刊行されたのが2005年。

時は小泉政権で、郵政民営化が実現するかどうかという、運輸業界にとって過渡期を迎えていた時代です。

物語はそんな運輸会社スバル運輸の営業部次長、吉野が新規事業開発部という、部下1人、アシスタントの女子社員1人の名ばかりの新設部署の部長に実質、左遷させられるところから始まります。

 

 

この本の読みどころ

 

何もないところから自分の力でビジネスを立ち上げて行くタイプと、企業の資本力を使って、思う存分力を発揮するタイプの2種類の人がいると思いますが、この小説の主人公はまさしく後者です。

この小説の面白さは、そんな大企業のしがらみの中で奮闘する吉野が思いつく、あっと驚かされる数々のビジネス・スキームにあります。

それらは、ただの運輸会社からマーケティング・カンパニーへと変貌を遂げる可能性を持つビッグ・アイディアに溢れています。

といっても、そのビジネス・スキームはある意味、今となっては物流の世界やIT業界では当たり前となってしまったものものですが、その現在の状況をいったん頭の中から忘れて、数々の革命的な事業形態の黎明期でもある2005年当時にたって、楽しむのが正解だと思います。

まさに「プロジェクトX」をみるかのように、新規事業が立ち上げる数々の発想とアイディアに驚かされることでしょう。

また、その生み出されていく発想の様は、現在のビジネスを創出するヒントにもなるかもしれません。

 

 しかし、どんなすぐれたアイディアをもったとしても肝に銘じなければいけないことがあり、この小説のキーパーソンが語る部分があります。

商売で一番大切なのは、信義を曲げんちゅうことや。つまらんわる知恵を駆使してお客様を騙すような商いは必ず失敗するもんや。お客様だけやないで、うちの仕事を請け負う業者、従業員にも正直でなければ成り立つもんやない

何をするにしても忘れてはいけない、重みのある深い言葉だと思いました。

 

この「スバル運輸」は企業体質なども含め、あからさまにあの会社だろうというモデルの企業が浮かびます。パワハラコンプライアンスが叫ばれる昨今からするとまさに時代錯誤ともいえるような描写が目立ち、主人公も現在なら結構アウトな感じで好みが分かれそうな気がしますが、この暑苦しいまでの熱量はこの時代特有だと思います。

 

“これからは頭に汗をかけ。”と主人公の吉野が若い社員にかける言葉はけっこう沁みます。

まさに手に汗握るとはこれだ、という経済小説の傑作です。

 

 

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