松永久秀のイメージがガラリと変わる!『じんかん / 今村 翔吾』はこんな本!

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じんかん / 今村 翔吾

  

どんな本?

 

織田信長明智光秀ほどの知名度はありませんが、その時代の重要人物の一人として忘れてはいけない人、それが松永久秀です。

再開された麒麟がくるでもちょうど松永久秀の重要な部分が描かれていますね。

でも、この人、いまいちどんな人物なのかよくわかりません。

 

2000年以降のドラマで、松永久秀役を演じているのは

と、顔ぶれを見ていただければわかるように若いイメージはありません。

それもそのはずで、信長より年上で、どちらかといえば信長の父、信秀と同年代です。

 

また、悪人的なイメージも強い印象です。

 実際、多くの謎につつまれた人物で、出自も諸説ありますし、人物像にもさまざまな見え方があります。

 

では、世間的な悪人というイメージの理由としてあげられるのが、

信長に二度謀反を企てたということ。

これに関して不思議なのは、二度謀反を企てたということは、一度はあの信長が許しているということです。

 

さらには、松永久秀三悪す。 

一つ目は、最初に使えた三好家の乗っ取り。

二つ目は、将軍・足利義輝を滅ぼしたこと。

三つ目は、東大寺大仏殿を焼き払ったこと。

これら三悪は、誰の視点から見たかで正義か悪かという判断が違ってきます。

 

このように、謀反をしたり悪事をはたらいたりという悪いイメージがつきまとっていますが、この辺に創作の余地が高い人物であるということがいえます。

この小説は、そんな謎に包まれた幼少時代から、晩年までを描き、説得力をもって新しい人物像を作り出しています。

 

この本の読みどころ

 

この小説は7章からなっていて、幼年時代から時代を追って進んでいくのですが、面白いのは、この松永久秀のことを各章のはじめで回想のように語っているのが、あの信長であるということ。

この辺の意外性のある構成がフックになっていて面白いです。

 

さらには、茶人としても知られますが、その哲学的な考え方にも深く惹かれます。

人生50年と考えられていた時代に、人間はなんのために生まれてきて、なぜ生きるのかということをつきつめていて、現代的な考え方をもった人物として描かれています。

悪人というイメージはこの幼年時代からの生き方を見ていけば、完全に覆させるでしょう。

 

そして、謀反と三悪の真相とはいったいどのようなものだったかもしっかり描かれていて、世間のイメージをくつがえす物語を楽しむことができます。

 

惜しくも直木賞の受賞は逃しましたが、受賞してもおかしくなかった傑作だと思います。

 

 

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